島で生まれ育ち暮らし続けてきた高齢者にとって、島民全員が親戚のようなもの、たとえ子どもたちが島外へ出て行っても、隣近所が互いに支えあうことで変わらない暮しをはぐくんできました。その一方、加齢に伴う病気や不自由さから子どもの暮す島外へ身を寄せたり、島外の施設に入所するケースが増え始めていました。
ひとたび島から離れると遺骨になってからしか島に戻れず、島を出て行くということは死を意味することでした。一人また一人と離島する高齢者が出るたびに、支えあう友人を失う高齢者がいます。それがまた島離れに拍車をかけ、この状況に多くの島民が不安を抱えていました。
NPOの前身となった池間島出身の女性グループは、その声を聞き、高齢者が引きこもらず互いに顔を合わせ、話ができる居場所を作るためにサロン活動を平成14年より開始しました。平成16年、NPO法人化を経て、生き生き教室として継続し、これまで66名の方が参加しています。
高齢者の居場所づくりとして始まったサロン活動でしでしたが、島に住んでいながら出歩くことが難しくなった・なっていく高齢者が予想以上に多いことに気づかされ、さらなるサービスの必要性を感じました。60歳以上の全島民を対象としたアンケート調査やこれまでのサロン活動を通じて確認された「かなーだんぎーまい、やぐまりーまい、すまどぅじゃうかい。かまぬゆーんかいや、やーぬ、たたみぬはなから(たとえ動けなくても・寝たきりになっても生まれ島がいい。最期の旅立ちは、住み慣れた自分の家の畳の上から)」という島民の想いを実現するため、平成18年、島唯一の介護事業所として小規模多機能型居宅介護事業所「きゅーぬふから舎」を開所しました。これまで45名の方が利用し8名の在宅看取りも実現しています。
そのような中、平成22年、島で初めて高齢者の孤独死が起こりました。島民の半分は高齢者、そして高齢者のほとんどは独居で、高齢者世帯という島の状況が、かつての互いに支えあう暮らし方を困難にしている、という現実を改めて認識させる出来事でした。「お互いの支えあいができる暮らし方=コミュニティの再生ができなければ、本当の意味での高齢者支援を実現できない」、との認識をあらたに、より広範囲な地域福祉へと事業内容の拡充を模索する契機となりました。
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