きゅ〜ぬふから舎の理念
カナーダンギーマイ、
ヤグマリーマイ、
スマドゥジャウカイ。
カマヌユーンカイヤ、
ヤーヌ、 タタミヌハナカラ。
小規模多機能型居宅介護とは?
厚生労働省のHPでは、『小規模多機能型居宅介護は、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行います』(http://www.kaigokensaku.jp/publish/group11.html)と説明されています。池間島のような地域では、まさにこのようなサービスが求められていました。
開設までの島民の声
島で生まれ育ち、生涯を島で暮らし続けてきた高齢者にとって、島民全員が親戚のようなものです。たとえ子どもたちが島外へ出て行っても、隣近所が互いに支えあうことで、変わらない暮らしをはぐくんできました。
しかし、一方で加齢に伴う病気や不自由さから、子どもの暮らす沖縄本島へ身を寄せたり、宮古島にある施設に入院・入所するというケースが増え始めました。ひとたび島を離れると、次に島に戻るのは亡くなった後、遺骨になってからです。つまり島を出ていくということは死を意味することでもありました。
一人、また一人と、島から離れる高齢者が出るたびに、一人また一人と支え合う友人を失う高齢者がいる。そのことがまた島離れに拍車をかける。 そんな状況に多くの島民が不安を抱えていました。その声を聞いて、当時島に一つもなかったサービスとしてサロンづくりを始めました。
サロンでの活動
お年寄りが一人で自宅に引きこもらず、互いに顔を合わせることのできる場’として、島の女性たち数名が完全なボランティアで始めたサロン活動。一人一品ずつ持ち寄り、ふるまうことから始めました。初めは自宅に知人や自分たちの親を呼び、次には親の友達にも声をかけてもらい、徐々に人数が増え始めました。しだいに自宅には入りきらなくなり、公民館を利用しました。しかし公民館には給湯設備がなく食器を洗うこともできなかったので、島の施設でありながら当時まったく利用されていなかった離島振興総合センターを活用し、サロンを行うことにしました。
意外な言葉
サロンに来ているお年寄りの会話から意外な言葉が聞かされました。「長い間○○さんを見ていない」というものです。島に住んでいながら見かけなくなる・・・。ゆっくりでも歩いてサロンに来られる方はいいけれど、出歩くことが難しくなった方が想像以上に多いことに気づかされたのです。 高齢者の居場所づくりと考えたサロン活動でしたが、意外な現実を知り、さらなるサービスが必要なのだと実感しました。
アンケートの実施
六十歳以上の島民全員に「こんなこといいなぁ、あったらいいなぁ」と題して、アンケート調査を実施しました。年齢、性別、家族構成、介護保険サービス利用の有無、「通いや訪問・泊まりのサービスがあったら利用したいか」、「誰と行きたいか」「どこで介護サービスを受けたいか」などを調査しました。浮かびあがってきた結果は「池間島から離れたくない」「住み慣れた自宅で暮らし続けたい」というものでした。それを受け、サロンだけでなく介護事業を、NPO法人としての活動に位置づけたのです。
島の風習
昔から島には様々な助け合いの風習があります。
島で生まれた男性が55歳になると、どこでどんな暮らしをしていようが、年に一度島に帰ってきて先輩方と島のことを語り合う‘ミャークヅツ’という行事は、今でも一年で一番大切な祭りとして健在です。お米やおかずの底が尽きたからちょっと借りるとか、食事を多く作って隣近所におすそ分けをする姿などは今でも比較的よく見られます。
一方、住宅事情の悪い子どもたちが少し大きな家に数名で泊まりに行きそこから学校へ通う‘トゥンカラヤー’という風習などは、少し前まで見られましたが今では記憶の中だけとなりました。
助け合ってきた人たちが一方で欠けてしまうと、助け合いたくてもできなくなります。それは部品の欠けた歯車が回らなくなるのと同じで、島に人がいなくなることで島の風習も消えつつあるのだと感じます。
でも、嘆いていてもはじまりません。今できることをはじめなければ。
行政への働きかけ
宮古島市に対して、小規模多機能型居宅介護は地域密着型事業で市町村事業であることの理解や、離島振興総合センターを無料で使わせて欲しいこと、NPOで小規模多機能を実現させて欲しいことをお願いをしました。担当部局が首を縦に振るまで、一日に3回も4回も通いつめ、繰り返しお願いしました。
その結果、離島総合センターを指定管理者として受託し、賃料無料で借りることができました。現在、宮古島市にある5つの小規模多機能事業所は、すべてが市から賃料無料で借りることができています。
けして簡単ではなかったけれど、保険者である市への協力依頼は必要な働きかけであり、最終的に理解と協力をいただけたことを、大変ありがたいと思っています。
現在の活動
仕事がなくなり年金も少ない中で、子どもと離れて暮らす多くの高齢者の中には、自分で食事を作ることはおろか三食食べることができず、低栄養から体力や筋力が低下していく方も少なくありません。そこで必要な方には無料で食事を持っていく配食を実施しています。小規模多機能での食事も、昼食と夕食の一日二食を無料で提供しています。食事の改善により、体力が向上することを実感しています。
また、ずっと放置されていたために錆だらけだった離島振興総合センターの大ホールを、住民を巻き込み協力いただきながら磨きあげ、ペンキを塗り、家庭からリサイクル品などをもらうことで、今では敬老会をはじめとした島の行事や結婚式まで行われる場所に生まれ変わり、通所の高齢者も参加できるようになりました。
島の方々に、素直に困っていることを伝え、協力をしていただくことで、人と人とのつながりを取り戻す活動にもなりました。
島の言葉(理念)の意味
たとえ動けなくなっても、
寝たきりになっても、島がいい。
あの世への旅立ちは、
住み慣れた我が家の畳から。
きゅーぬふから舎の理念でもあるこの言葉。必ずしも叶うとは限らない時代です。しかし、介護とは人と人との心を紡ぐこと。紡がれた心があればこの島の言葉、想いを叶えられると考えています。だからこそ、地域密着型事業である小規模多機能型居宅介護事業所きゅーぬふから舎を運営しています。
きゅーぬふから舎とは、島の言葉で「今日も楽しいね!」という意味です。大家族のような島だからこそ、お互いが支え合うのが当たり前のことであり、最後の瞬間まで‘今日も楽しいね’と笑っていられるよう支えていくこと、それが私たちの役割だと思っています。
池間島だからこそできることはあると思いますが、池間島じゃなければできないことではないと思います。介護の理念を追求し、地域に合った理念を地域の方々と共に作り上げ、それに向かってひたすら歩んでいくことが、地域に根差したケアにつながるのだと思うのです。
サービス評価結果
2015年度サービス評価結果
総括表
自己評価
2016年度サービス評価結果
総括表
自己評価
2017年度サービス評価結果
総括表
自己評価